KEN SASAKI International Tax Accountant Office

いわゆる「分譲マンション」の評価が変わりました

相続関係情報

 令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した「居住用の区分所有財産」(いわゆる分譲マンション)の価額は、新たに定められた個別通達※により評価します。
 ※ 令和5年9月 28 日付課評2-74 ほか1課共同「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)

居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)令和5年9月28日

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/231004/index.htm

「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)の趣旨について(情報)令和5年10月11日

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/231013/01.htm

新たな評価方法の概要
 分譲マンションにおける相続税評価額と市場価格(売買実例価額)との乖離の要因として、まず、家屋の相続税評価額は、再建築価格に基づく固定資産税評価額により評価しているが、市場価格(売買実例価額)は、再建築価格に加えて建物総階数及び分譲マ ンション一室の所在階も考慮されているほか、固定資産税評価額への築年数の反映が大きすぎる(経年による減価が実態より大きい)と、相続税評価額が市場価格(売買実例 価額)に比べて低くなるケースがあると考えられた。
 また、土地(敷地利用権)の相続税評価額は、土地(敷地)の面積を敷地権の割合(共 有持分の割合)に応じてあん分した面積に、1m²当たりの単価(路線価等)を乗じて評価しているが、当該面積は、一般的に高層マンションほどより細分化されて狭小となるため、当該面積が狭小なケースは、立地条件が良好な場所でも、その立地条件が敷地利用権の価額に反映されづらくなり、相続税評価額が市場価格(売買実例価額)に比べて低くなることが考えられた。
 そこで、相続税評価額が市場価格(売買実例価額)と乖離する要因と考えられた、① 築年数、②総階数指数、③所在階及び④敷地持分狭小度の4つの指数を説明変数とし、相続税評価額と市場価格(売買実例価額)との乖離率を目的変数として、分譲マン ションの取引実態等に係る取引事例について重回帰分析を行ったところ、決定係数:0.587(自由度調整済決定係数:0.586)となる有意な結果が得られた。
 この結果を踏まえ、次の理由から、以下に示す算式により求めた評価乖離率を基に相続税評価額を補正する方法を採用することとした。
① 分譲マンションは流通性・市場性が高く、類似する物件の売買実例価額を多数把握することが可能であり、かつ、価格形成要因が比較的明確であることからすれば、そ れら要因を指数化して売買実例価額に基づき統計的に予測した市場価格を考慮して相 続税評価額を補正する方法が妥当であり、相続税評価額と市場価格との乖離を補正する方法として直截的であって、執行可能性も高いこと
② 相続税評価額と市場価格(売買実例価額)との乖離の要因としては、上記4つの指数のほかにもあり得るかもしれないが、申告納税制度の下で納税者の負担を考慮する と、これらの4つの指数は、納税者自身で容易に把握可能なものであることに加え、 特に影響度の大きい要因であること

 また、評価乖離率に基づく相続税評価額の補正に当たっては、次の理由から、上記算式により算出された評価乖離率の逆数である評価水準が0.6未満となる場合には、評価乖離率に0.6を乗じた値を区分所有補正率として、評価水準が1を超える場合には、評価乖離率を区分所有補正率として、それぞれ相続税評価額に乗ずることで補正することとした。
① 上記1のとおり、相続税又は贈与税については、相続若しくは遺贈により取得又は その年中に贈与により取得した全ての財産の価額の合計額をもって課税価格を計算することとされているところ、相続税評価額と市場価格(売買実例価額)との乖離に関して、同じ不動産である分譲マンションと一戸建てとの選択におけるバイアスを排除する観点から、一戸建てにおける乖離(取引実態等の結果は平均1.66倍)も考慮する必要がある。したがって、一戸建ての相続税評価額が市場価格(売買実例価額)の6割程度の評価水準となっていることを踏まえ、それを下回る評価水準の分譲マンションが一戸建てと比べて著しく有利となると不公平感が生じかねないため、分譲マンションにおいても少なくとも市場価格の6割水準となるようにしてその均衡を図る必要があること
② 路線価等に基づく評価においても、土地の価額には相当の値幅があることや、路線価等が1年間適用されるため、評価時点であるその年の1月1日以後の1年間の地価変動にも耐え得るものであることが必要であること等の評価上の安全性を配慮し、地価公示価格と同水準の価格の80%程度を目途に、路線価等を定めていること
 なお、上記については、令和5年度与党税制改正大綱(令和4年12月16日決定)において、マンションの評価方法の適正化を検討する旨の記載(上記1(注3)参照)がされたことを受け、「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」を令和5年1月から6月にかけて計3回開催し、分譲マンションの新たな評価方法等について有識者から意見を聴取しながら、その客観性及び妥当性について検討を行った。

《説明》基本的な考え方
 相続税又は贈与税は、原則として、相続若しくは遺贈により取得した全ての財産の価額の合計額をもって、又はその年中において贈与により取得した全ての財産の価額の合計額をもって課税価格を計算することとされており(相法11の2、21の2)、これらの財産の価額について、相続税法は、「この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺 贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」(時 価主義)旨を規定している(相法22)。そして、この「時価」とは、「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」(客観的な交換価値)をいい、その価額は、「この通達(評 価通達)の定めによって評価した価額による」こととしており(評基通1)、評価通達に より内部的な取扱いを統一するとともに、これを公開することにより、課税の適正・公平を図るとともに、納税者の申告・納税の便にも供されている。
 このように、評価の原則が時価主義をとり、客観的な交換価値を示す価額を求めようとしている以上、財産の評価は自由な取引が行われる市場で通常成立すると認められる 売買実例価額によることが最も望ましいが、課税の対象となる財産は、必ずしも売買実 例価額の把握が可能な財産に限られないことから、評価通達においては、実務上可能な方法で、しかもなるべく容易かつ的確に時価を算定するという観点から、財産の種類の 異なるごとに、それぞれの財産の本質に応じた評価の方法を採用している。
不動産の評価においても、このような考え方に基づき、土地については、近傍の土地の売買実例価額や標準地についての公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額及び精 通者意見価格等を基として評価する「路線価方式」や「倍率方式」によって評価することとしている。他方、家屋については、再建築価格を基準として評価される「固定資産 税評価額」に倍率を乗じて評価することとしている(固定資産税評価額に乗ずる倍率は 評価通達別表1で「1.0」と定めている。)。家屋について、再建築価格を基準とする評価としているのは、売買実例価額は、個別的な事情による偏差があるほか、家屋の取引が一般的に宅地とともに行われている現状からして、そのうち家屋の部分を分離することが困難である等の事情を踏まえたものである。
 しかしながら、居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)については、近年、 不特定多数の当事者により市場において活発に売買が行われるとともに、従来に比して 類似の分譲マンションの取引事例を多数把握することが容易になっている。また、相続 税評価額と売買実例価額とが大きく乖離するケースもあり、平成30年中に取引され た全国の分譲マンションの相続税評価額と売買実例価額との乖離について取引実 態等を確認したところ、平均で2.34倍の乖離が把握され、かつ、約65%の事例で2倍以 上乖離していることが把握された(以下、当該分譲マンションに係る取引実態等と一戸 建て不動産の相続税評価額と売買実例価額との乖離に関する取引実態等を併せて、単に 「取引実態等 」 という 。)。

「居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A」について(情報)令和6年5月 国税庁資産評価企画官

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/231013/02.htm

Q. 新しい居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)の評価方法の概要について教えてください。

A. 本通達において、区分所有者が存する家屋(一定のものを除きます。)で、居住の用に供する専有部分のあるもの(以下「一棟の区分所有建物」といいます。)に存する居住の用に供する専有部分一室に係る区分所有権及び敷地利用権(以下「一室の区分所有権等」(居住用の区分所有財産)といいます。)については、その一室の区分所有権等に係る敷地利用権(土地部分) の「自用地としての価額」及び区分所有権(家屋部分)の「自用家屋としての価額」のそれぞれに「区分所有補正率」を乗じて計算した価額を、その「自用地としての価額」及びその「自用家屋としての価額」とみなして評価基本通達を適用して計算した価額によって評価する こととしています。
 したがって、本通達適用後の「一室の区分所有権等に係る敷地利用権」の「自用地としての価額」又は「一室の区分所有権等に係る区分所有権」の「自用家屋としての価額」は、次の算式のとおり計算することとなります。
 ただし、評価水準が0.6以上1以下の場合は、区分所有補正率を乗じて計算せず、 評価することに注意してください。

(注1) 自用の場合は、上記の算式により計算した自用地としての価額及び自用家屋としての価額の合計額が、一室の区分所有権等の相続税評価額となります。なお、貸付用(貸家建付地)の場合は、一室の区分所有権等に係る敷地利用権の「自用地としての価額」に「区分所有補正率」を乗じて、みなされた「自用地としての価額」を計算した後、その価額を基に評価基本通達26((貸 家建付地の評価))を適用して、その敷地利用権の価額を評価します。貸付用(貸家)の場合は、一室の区分所有権等に係る区分所有権の「自用家屋としての価額」に「区分所有補正率」を乗じて、みなされた「自用家屋としての価額」を計算した後、その価額を基に評価基本通達 93((貸家の評価))を適用して、その区分所有権の価額を評価します。
(注2) 本通達は、令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与(以下「相続等」といいます。) により取得した財産の評価について適用されるところ、相続等により取得した財産が取引相場のない株式の場合であっても、その株式を令和6年1月1日以後に取得した場合は、その取引相場のない株式の評価を純資産価額方式によって評価する場合における1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算上、評価会社が所 有する一室の区分所有権等に係る敷地利用権及び区分所有権については、本通達が適用されます。
 ただし、取引相場のない株式を純資産価額方式によって評価する場合における1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算において、評価会社が 課税時期前3年以内に取得等した一室の区分所有権等に係る敷地利用権及び区分所有権の価額については、評価基本通達185((純資産価額))括弧書により、「課税時期におけ る通常の取引価額に相当する金額」によって評価されます。