上場株式とは、金融商品取引所に上場されている株式をいいます。
上場株式は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(相続または遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の最終価格によって評価します。
ただし、課税時期の最終価格が、次の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。
イ 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
ロ 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
ハ 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
なお、課税時期に最終価格がない場合やその株式に権利落などがある場合には、一定の修正をすることになっています。
以上が原則ですが、負担付贈与や個人間の対価を伴う取引で取得した上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価します。
上場株式の価額は、「上場株式の評価明細書」を使用して評価することができます。
根拠法令等 評基通168~172
相続税財産評価に関する基本通達(評価単位)
168 株式及び株式に関する権利の価額は、それらの銘柄の異なるごとに、次に掲げる区分に従い、その1株又は1個ごとに評価する。(昭53直評5外・平2直評12外・平14課評2-2外・平15課評2-15外・平18課評2-27外・平20課評2-5外・平26課評2-19外改正)
(1) 上場株式(金融商品取引所(金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条≪定義≫第16項に規定する金融商品取引所をいう。以下同じ。)に上場されている株式をいう。以下同じ。)
(2) 気配相場等のある株式
気配相場等のある株式とは、次に掲げる株式をいう。
- イ 登録銘柄(日本証券業協会の内規によって登録銘柄として登録されている株式をいう。以下同じ。)及び店頭管理銘柄(同協会の内規によって店頭管理銘柄として指定されている株式をいう。以下同じ。)
- ロ 公開途上にある株式(金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式(登録銘柄を除く。)及び日本証券業協会が株式を登録銘柄として登録することを明らかにした日から登録の日の前日までのその株式(店頭管理銘柄を除く。)をいう。以下同じ。)
(3) 取引相場のない株式((1)及び(2)に掲げる株式以外の株式をいう。以下同じ。)
(4) 株式の割当てを受ける権利(株式の割当基準日の翌日から株式の割当ての日までの間における株式の割当てを受ける権利をいう。以下同じ。)
(5) 株主となる権利(株式の申込みに対して割当てがあった日の翌日(会社の設立に際し発起人が引受けをする株式にあっては、その引受けの日)から会社の設立登記の日の前日(会社成立後の株式の割当ての場合にあっては、払込期日(払込期間の定めがある場合には払込みの日))までの間における株式の引受けに係る権利をいう。以下同じ。)
(6) 株式無償交付期待権(株式無償交付の基準日の翌日から株式無償交付の効力が発生する日までの間における株式の無償交付を受けることができる権利をいう。以下同じ。)
(7) 配当期待権(配当金交付の基準日の翌日から配当金交付の効力が発生する日までの間における配当金を受けることができる権利をいう。以下同じ。)
(8) ストックオプション(会社法(平成17年法律第86号)第2条第21号に規定する新株予約権(以下この節において「新株予約権」という。)が無償で付与されたもののうち、次の(9)に該当するものを除いたものをいう。ただし、その目的たる株式が上場株式又は気配相場等のある株式であり、かつ、課税時期が権利行使可能期間内にあるものに限る。)
(9) 上場新株予約権(会社法第277条の規定により無償で割り当てられた新株予約権のうち、金融商品取引所に上場されているもの及び上場廃止後権利行使可能期間内にあるものをいう。)
168-2 削除(平18課評2-27外)
(上場株式の評価)
169 上場株式の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(昭47直資3-16・平2直評12外・平15課評2-15外・平20課評2-5外改正)
(1) (2)に該当しない上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所(国内の2以上の金融商品取引所に上場されている株式については、納税義務者が選択した金融商品取引所とする。(2)において同じ。)の公表する課税時期の最終価格によって評価する。ただし、その最終価格が課税時期の属する月以前3か月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額(以下「最終価格の月平均額」という。)のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額によって評価する。
(2) 負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得した上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価する。
(上場株式についての最終価格の特例-課税時期が権利落等の日から株式の割当て等の基準日までの間にある場合)
170 前項の定めにより上場株式の価額を評価する場合において、課税時期が権利落又は配当落(以下「権利落等」という。)の日から株式の割当て、株式の無償交付又は配当金交付(以下「株式の割当て等」という。)の基準日までの間にあるときは、その権利落等の日の前日以前の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格をもって課税時期の最終価格とする。
なお、これを図により例示すれば、次のようになる。 (平11課評2-2外・平18課評2-27外・平22課評2-18外・令3課評2-43外改正)
課税時期の最終価格=100円(75円は、権利落等の後の最終価格なので採用しない。)
(注) 上記に該当する上場株式の最終価格の月平均額については、172≪上場株式についての最終価格の月平均額の特例≫の定めがあることに留意を要する。
(上場株式についての最終価格の特例-課税時期に最終価格がない場合)
171 169≪上場株式の評価≫の定めにより上場株式の価額を評価する場合において、課税時期に最終価格がないものについては、前項の定めの適用があるものを除き、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に掲げる最終価格をもって課税時期の最終価格とする。(平11課評2-2外・平18課評2-27外・平22課評2-18外・令3課評2-43外改正)
(1) (2)又は(3)に掲げる場合以外の場合 課税時期の前日以前の最終価格又は翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格(その最終価格が2ある場合には、その平均額)
なお、これを図により例示すれば、次のようになる。
課税時期の最終価格=102円(100円又は102円のうち課税時期に最も近い日の最終価格)
(2) 課税時期が権利落等の日の前日以前で、(1)の定めによる最終価格が、権利落等の日以後のもののみである場合又は権利落等の日の前日以前のものと権利落等の日以後のものとの2ある場合、課税時期の前日以前の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格
なお、これを図により例示すれば、次のようになる。
課税時期の最終価格=101円(76円の方が101円より課税時期に近いが、76円は権利落等の日以後の最終価格なので採用しない。)
(3) 課税時期が株式の割当て等の基準日の翌日以後で、(1)の定めによる最終価格が、その基準日に係る権利落等の日の前日以前のもののみである場合又は権利落等の日の前日以前のものと権利落等の日以後のものとの2ある場合 課税時期の翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格
なお、これを図により例示すれば、次のようになる。
課税時期の最終価格=75円(100円の方が75円より課税時期に近いが、100円は権利落等の日以前の最終価格なので採用しない。)
(注) 上記の(2)及び(3)に該当する上場株式の最終価格の月平均額については、次項の定めがあることに留意を要する。
(上場株式についての最終価格の月平均額の特例)
172 169≪上場株式の評価≫の定めにより上場株式の価額を評価する場合において、課税時期の属する月以前3か月間に権利落等がある場合における最終価格の月平均額は次によるものとする。(昭47直資3-16・平11課評2-2外・平18課評2-27外・平22課評2-18外・令3課評2-43外改正)
(1) 課税時期が株式の割当て等の基準日以前である場合におけるその権利落等の日が属する月の最終価格の月平均額は、次の(2)に該当するものを除き、その月の初日からその権利落等の日の前日(配当落の場合にあっては、その月の末日)までの毎日の最終価格の平均額とする。
なお、これを図により例示すれば、次のようになる。
(1)の場合の上場株式についての最終価格の月平均額の特例の図
最終価格の月平均額=権利落の場合は100円、配当落の場合は95円
(2) 課税時期が株式の割当て等の基準日以前で、その権利落等の日が課税時期の属する月の初日以前である場合における課税時期の属する月の最終価格の月平均額は、次の算式によって計算した金額(配当落の場合にあっては、課税時期の属する月の初日から末日までの毎日の最終価格の平均額)とする。
なお、これを図により例示すれば、次のようになる。
(株式の割当条件)
1 株式の割当数 株式1株に対し0.5株を割当て
2 株式1株につき払い込むべき金額 40円
最終価格の月平均額=権利落の場合は80円×(1+0.5)-40円×0.5=100円、配当落の場合は80円
(3) 課税時期が株式の割当て等の基準日の翌日以後である場合におけるその権利落等の日が属する月の最終価格の月平均額は、その権利落等の日(配当落の場合にあってはその月の初日)からその月の末日までの毎日の最終価格の平均額とする。
なお、これを図により例示すれば、次のようになる。
最終価格の月平均額=権利落の場合は95円、配当落の場合は100円
(4) 課税時期が株式の割当て等の基準日の翌日以後である場合におけるその権利落等の日が属する月の前月以前の各月の最終価格の月平均額は、次の算式によって計算した金額(配当落の場合にあっては、その月の初日から末日までの毎日の最終価格の平均額)とする。
なお、これを図により例示すれば、次のようになる。
(株式の割当条件)
1 株式の割当数 株式1株に対し0.5株を割当て
2 株式1株につき払い込むべき金額 50円
最終価格の月平均額=権利落の場合は、(125円+50円×0.5)÷(1+0.5)=100円、配当落の場合は125円