KEN SASAKI International Tax Accountant Office

B2BからB4Bへ

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B4B (business for business, B for B)
「B4B (B for B)」とは、「business for business」の略で、企業間取引(business to business, B2B, BtoB)の関係性に加えてさらに協業や相互利益を重視する考え方のことで「B4B企業」、「B4Bモデル」などのように用います。

 B2Bは企業間取引であり、企業は売り手と買い手の関係にあります。売り手の企業は、自社の利益と成長を軸としていかに顧客に対して商品やサービスを販売するかを考えるのが通常です。
 一方、B4Bでは、売り手の企業は顧客の事業の成長にいかに寄与したかが重要となります。顧客の抱える課題を解決するために顧客と協業して成功へと導き、最終的には自社の成長につなげるという相互利益の考え方に基づきます。そのため、B4Bにおける企業の関係性はB2Bと比べて必然的に密接で長期的なものになりやすいと言えます。企業はビジネスの世界における生態系の一部であり、生態系全体の成長を意識した自社の存在の理解が求められることになるのです。

 また、B4B(Business-for-Business)とは、ビジネス(サービス)のためのビジネス(事業、営業)を意味します。一般的に企業は価値を生み出すため、マーケティング及び広告、売上増大、販路模索、価格管理、顧客創出及び管理、市場開拓、海外進出、協業企業の選定などに悩みを抱えています。このようなニーズに対して、具体的に一連の解決策を提示し、実行まで積極的に支援するサービスをB4Bと言います。


 B4BはB2Bより、具体的で積極的なアプローチをする概念になります。B4Bを意識するとビジネスが変わるという事例を一つ紹介します。

 ルーカーチョコレート(Luker Chocolate)社は食品会社へチョコレート原料を提供する会社です。この会社のイノベーション担当役員だったSergio Restrepo氏は、自社の営業社員が他社製品と変わらないコモディティ化されてしまったチョコレート原料を、大量に購入したら割引価格で提供する販売をしていることに気づきました。営業社員は顧客会社のビジネスに対する理解度もあまり高くなかったです。
 B2Bの観点で主な成功指標となるのが販売数量です。顧客のビジネスを理解する必要もなく、顧客のビジネスにどのような貢献ができるかを悩まなくても達成できます。しかし、他の企業に商品を売る(sold to)ビジネスモデルから他の企業のために働く(worked for)ビジネスモデルに変えると、新たなチャンスが広がりました。
 B4Bの成功指標は、顧客をどれだけサポートし、顧客の成功にどれだけ貢献するかです。例えば、 ルーカーチョコレート社の場合は、顧客の一つだったクッキー製造会社を支援することにしました。
 チョコレート専門家を派遣し、チョコレートを活用する際の生産工程の改善や工場設計を支援しました。そして自社で調査したチョコレート業界の市場動向も共有し、消費者に対する新しい見解やインサイトも提供しました。事業開発チームを立ち上げ、クッキーのパッケージ改善プロジェクトに参加し、販売チャネルで新たなパッケージのプロモーション活動も行いました。
 その後も新製品の開発やニーズを発掘するプロセスにてクッキー会社と協業を続けていました。
 その後、1年もたたずに顧客に販売するチョコレート量が2倍以上増加しました。
 これまでは単価交渉に時間をかけてきましたが、今は顧客と共に持続可能な成長に向けて議論することに時間をかけています。

 B2Bの観点では、競合企業と激しい価格競争を行うため、少しでも低い値段を提示できる大手メーカーの方が有利な立場になりがちです。
 しかし、B4Bの観点でアプローチすれば、価格交渉以外にも顧客と関係を構築することができます。
 価格は価値を評価する様々な要素の中で1つではありますが、すべてではありません。それから、価格が主な評価要素ではない場合もたくさんあります。
 顧客は将来のキャッシュフローを重視します。どれだけの現金(size)を長い期間(longevity)創出できるかを意味します。顧客の成功のためにビジネスを行うと、短期間な割引価格を提案するのではなく、顧客の将来のキャッシュフローを長期間に渡り改善できます。その結果、顧客との関係も新たなステージに入るようになります。

 B4Bへビジネス認識を変えれば、成長に対する視点や価格と価値に対するマインド、そして人材マネージメントなど様々な要素に影響を及ぼすことになります。
 これまでは「自社の成長のために各顧客に対する目標売上はいくらか」「売上を増やして競争力を維持するために、製品価格や単価をいくらまで下げなければならないか」といったことを悩んできたと思います。
 しかしB4Bの観点では、「顧客の成長のために我々ができる支援は何か」「持続可能性を維持しながら、顧客に提供できる最大限の価値は何か」に変わります。目標売上を達成するために営業社員にノルマや成果給を設定するのではなく、顧客の目線でより高い価値を提供できるコンサルタントや専門家になれるように社員を育成するようになります。四半期ごとに目標売上の達成方法を悩むのではなく、どんな新しいサービスで製品販売を補完するか、そして顧客が欲しがる価値をどのように創出するかについて悩むようになります。
 また、新規ビジネスに対する目標値は、どれだけ新しい提案を行ったかではなく、既存顧客の高い評価や推薦によってどれだけの新規顧客が増えたかに変わります。どれほど積極的に営業活動を行ったかではなく、新しい顧客がどれだけ簡単に自社を見つけ出し、すぐに取引が開始できるかになります。
 顧客の成功が自社の長期的競争力のベースであることを認識するようになると、マーケティングと値引だけではなく、顧客に価値を提供できるアイデアがたくさん出てきます。顧客の立場からも他の競合他社に変えられないパートナとして位置づけられるようになります。

 B4Bは顧客だけでなくサプライヤーにも拡張されています。「for business」の概念は、個々の企業間の取引ではなく、より大きなビジネスの一部であることに着目できます。会社が属する大きなシステムの成功を目指し、市場全体を成長させるようになります。
 要するに、B4Bの世界では、協業とコラボレーションによる相互利益がテーマとなり、持続可能な競争力の源となります。これは最終的にビジネス環境の改善に貢献し、従業員エンゲージメントも向上させられます。最終的に、働く心構えと組織文化も本質的に変化することになります。

参考:https://sloanreview.mit.edu/article/shifting-from-b2b-to-b4b-can-build-a-more-sustainable-business/