Q.
被相続人甲(日本に住所を有する)は、本年3月に死亡しました。
共同相続人のうち、Aは、外国籍(米国籍)を有し、外国(米国)に居住していますが、現在葬式のため日本に帰郷しているので、この際共同相続人間で遺産の分割の協議を行い、相続税の申告書を提出したいと考えています。配偶者の税額軽減の適用を受けるためには遺産分割協議書に印鑑証明書を添付しなければならないということですが、Aの場合、印鑑証明書はとれないので、パスポートで身分を証明し、米国領事館又は公証人役場で遺産分割協議書の同人の署名について認証を受けようと考えていますが、この認証で差し支えありませんか。
A.
米国領事は、公証人の資格をもち、私署証書の認証事務を行うことになっていますので、その認証は日本の印鑑証明書に代わる役割をもっていますから上記の認証で差し支えありません。
【関係法令通達】
相続税法第1条の3
相続税法基本通達19の2-17
相続税法(相続税の納税義務者)
第一条の三 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
イ 一時居住者でない個人
ロ 一時居住者である個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
二 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの
イ 日本国籍を有する個人であつて次に掲げるもの
(1) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもの
(2) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないもの(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
ロ 日本国籍を有しない個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
三 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(第一号に掲げる者を除く。)
四 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(第二号に掲げる者を除く。)
五 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前各号に掲げる者を除く。)
2 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第百三十七条の二(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)又は第百三十七条の三(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予)の規定の適用がある場合における前項第一号ロ又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、次に定めるところによる。
一 所得税法第百三十七条の二第一項(同条第二項の規定により適用する場合を含む。次条第二項第一号において同じ。)の規定の適用を受ける個人が死亡した場合には、当該個人の死亡に係る相続税の前項第一号ロ又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該個人は、当該個人の死亡に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。
二 所得税法第百三十七条の三第一項(同条第三項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第二項第二号において同じ。)の規定の適用を受ける者から同法第百三十七条の三第一項の規定の適用に係る贈与により財産を取得した者(以下この号において「受贈者」という。)が死亡した場合には、当該受贈者の死亡に係る相続税の前項第一号ロ又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該受贈者は、当該受贈者の死亡に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該受贈者が同条第一項の規定の適用に係る贈与前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。
三 所得税法第百三十七条の三第二項(同条第三項の規定により適用する場合を含む。以下この号及び次条第二項第三号において同じ。)の規定の適用を受ける相続人(包括受遺者を含む。以下この号及び次条第二項第三号において同じ。)が死亡(以下この号において「二次相続」という。)をした場合には、当該二次相続に係る相続税の前項第一号ロ又は第二号イ(2)若しくはロの規定の適用については、当該相続人は、当該二次相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたものとみなす。ただし、当該相続人が所得税法第百三十七条の三第二項の規定の適用に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがない場合は、この限りでない。
3 第一項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 一時居住者 相続開始の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)別表第一(在留資格)の上欄の在留資格をいう。次号及び次条第三項において同じ。)を有する者であつて当該相続の開始前十五年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が十年以下であるものをいう。
二 外国人被相続人 相続開始の時において、在留資格を有し、かつ、この法律の施行地に住所を有していた当該相続に係る被相続人をいう。
三 非居住被相続人 相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有していなかつた当該相続に係る被相続人であつて、当該相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもののうちそのいずれの時においても日本国籍を有していなかつたもの又は当該相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないものをいう。
相続税法基本通達(財産の分割の協議に関する書類)
19の2-17 相続税法施行規則(昭和25年大蔵省令第17号。以下「法施行規則」という。)第1条の6第3項第1号に規定する「財産の分割の協議に関する書類」とは、当該相続に係る共同相続人又は包括受遺者がその相続又は遺贈に係る財産の分割について協議をした事項を記載した書類で、これらの者が自署し、これらの者の住所地の市区町村長の印鑑証明を得た印を押しているものをいうのであるが、共同相続人又は包括受遺者が民法第13条第1項第10号((保佐人の同意を要する行為等))に規定する制限行為能力者である場合には、その者の特別代理人又は法定代理人がその者に代理して自署し、当該代理人の住所地の市区町村長の印鑑証明を得た印を押しているものをいうのであるから留意する。(昭47直資2-130追加、昭50直資2-257、昭57直資2-177、平元直資2-207、平6課資2-114、平8課資2-116、平15課資2-1、平17課資2-4、令2課資2-10改正)
参考 不動産登記の場合
外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて不動産登記手続においては,登記申請が申請人本人からされたものであることや,申請人以外の第三者の承諾が必要な場合に,その承諾が本人からされたものであることを担保するため,申請人等本人の印鑑証明書を添付することが必要とされている場合がありますが(不動産登記令(平成16年政令第397号)第16条第1項,同条第2項,第18条第1項,同条第2項及び第19条),本人が外国に居住している場合については,印鑑証明書を取得することができないため,これに代わる書面として,日本の領事が作成した署名証明を添付することが認められています。
このほか,居住地が日本の在外公館の所在地と離れている場合など,領事が作成した署名証明を取得することが困難なときは,外国の公証人が作成した署名証明を添付して登記の申請をすることも認められています。
なお,日本の在外公館における署名証明の手続につきましては,外務省のホームページをご確認ください。
参考先例○在留邦人の署名証明について
(昭和48年4月10日民三第2999号民事局第三課長事務代理回答)
(要 旨)
1 オーストラリア国の公証人又は治安判事が,同国法に基づきStatutory Declarationの形式により,同国在留の邦人の為になした署名証明は,日本国総領事館が行う書名証明に代えることができる。
2 右の場合,原文書が外国語により作成され,また本人の署名が日本文字の署名だけでも,ローマ文字の署名を並記したものでも差し支えない。
3 オーストラリア国の公証人または治安判事が,同国法に基づくStatutory Declarationの形式により在留邦人のためになす,署名証明書中に,直接特別受益の内容,又は所有権移転登記の承諾等の具体的内容が記載されておれば,それのみで特別受益の証明書や承諾書として取扱うことができる。○伯国在留邦人の署名証明について
出典:法務省HP https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00346.html
(昭和54年6月29日民三第3548号民事局第三課長回答,同日民三第3549号法務局民事行政第一部長・法務局民事行政部長・地方法務局長あて,民事局第三課長通知)
(要 旨)
ブラジル在住の日本人が(1)相続分不存在の証明書(2)委任状(3)所有権移転の登記の嘱託承諾書(4)遺産分割協議書(5)住所地に関する宜誓書を提出する際,これに添付する本人の署名証明は,在外公館の証明に代えブラジル国の公証人の署名証明でも差し支えない。
この場合の原文は,外国語により作成されたものでもよく,本人の署名は日本文字又はローマ字のいずれか,あるいはこれらを併記したものでもよい。