KEN SASAKI International Tax Accountant Office

譲渡所得と社会保険料

お役立ち情報

 健康保険にはいくつか種類があり、不動産売却等の譲渡所得が発生した際に金額に影響があるかどうかは健康保険の種類によって異なります。

健康保険の4つの種類

  • 健康保険・・・民間企業に勤める会社員が加入する健康保険で、正社員だけでなく、アルバイト、パート、嘱託社員、契約社員も加入することができます
  • 共済保険・・・公務員や教員などの公務員が加入する健康保険
  • 国民健康保険・・・健康保険や共済保険の対象とならない、自営業の人や年金受給者等の団体に所属していない人が加入する健康保険
  • 後期高齢者医療保険・・・国民健康保険に入っていた人が75歳を超えると加入する健康保険

健康保険

加入者本人

 健康保険とは、会社員のような会社に雇用されている人が加入する保険です。健康保険には、中小企業の従業員が多く加入している協会けんぽと大手企業の従業員が多く加入している組合健保の2種類あります。
 協会けんぽと組合健保の加入者が支払う社会保険料と介護保険料の算出方法は同じです。標準報酬月額と呼ばれる会社から支払われる給与が基準となっており、譲渡所得は給与に含まれないため、不動産の売却等で利益が生じても保険料が高くなることはありません。

扶養家族

 配偶者や親の健康保険の扶養に入っている人が不動産等を売却して譲渡所得があった場合には、扶養対象から外れる可能性があります。
 ただし、不動産売却による譲渡所得は一時的な収入であることを理由に、扶養から外れなくても良い場合もあります。
 扶養されるべき人であるかどうかの収入基準は継続的・恒常的な収入で判断しますが、この判断は加入している健康保険組合によって異なりますので、扶養に入っている方が不動産売却をする場合は、前もって健康保険組合に問い合わせてみましょう。
 扶養から外れる場合は、国民健康保険に加入が必要です。
 また、一度扶養から外れても、その後収入条件などを満たせば再度扶養に入ることもできます。

共済保険

加入者本人

 共済保険とは、公務員や社会福祉法人といった団体に雇用されている職員などが加入する保険です。
 共済保険加入者が支払う社会保険料と介護保険料も標準報酬月額が基準となっています。譲渡所得は給与に含まれないため、不動産を売却して利益が生じた場合に保険料が高くなることはありません。

扶養家族

 共済保険についても上記の健康保険と同様に、配偶者や親の健康保険の扶養に入っている人が不動産等を売却して譲渡所得があった場合には、扶養対象から外れる可能性があります。
 ただし、不動産売却による譲渡所得は一時的な収入であることを理由に、扶養から外れなくても良い場合もあります。
 扶養されるべき人であるかどうかの収入基準は継続的・恒常的な収入で判断しますが、この判断は加入している健康保険組合によって異なりますので、扶養に入っている方が不動産売却をする場合は、前もって健康保険組合に問い合わせてみましょう。
 扶養から外れる場合は、国民健康保険に加入が必要です。
 また、一度扶養から外れても、その後収入条件などを満たせば再度扶養に入ることもできます。

国民健康保険

 国民健康保険とは、自営業を行っている人や無職の人などが加入する保険です。
 健康保険や共済保険には、標準報酬月額と呼ばれる社会保険料や介護保険料の算出基準がありますが、自営業を行っている人や無職の人にはそのような基準がありません。
 国民健康保険加入者が支払う社会保険料や介護保険料は世帯の総所得が基準となっており、総所得には譲渡所得も含まれます。そのため、人によっては翌年の保険料が一時的に上がる可能性があるという点に注意が必要です。

後期高齢者医療保険

 75歳以上の人が後期高齢者医療の対象者になります。
 後期高齢者医療保険料や介護保険料は世帯の総所得が基準となっており、総所得には譲渡所得も含まれます。そのため、人によっては翌年の保険料が一時的に上がる可能性があるという点に注意が必要です。
 医療費負担(窓口) 原則は1割負担です。譲渡所得が発生することで所得や収入が一定金額を超えた場合は、医療費負担の割合が2割または3割になります。

国民健康保険と後期高齢者医療保険の上限額

国民健康保険料

 国民健康保険料は、医療保険分、後期高齢者支援分、介護保険料分(40~64歳のみ対象)の内訳で構成されています。
 さらにそれぞれ、以下の4つ(または3つ)の合計で保険料が決まります。

  • 所得割:所得から計算される金額
  • 均等割:世帯の加入人数から計算される金額
  • 平等割:自治体ごとに決まっている金額
  • 資産割:固定資産から計算される金額。加算していない自治体もある

 不動産売却等の譲渡所得があったことで影響が出るのは「所得割」の部分です。
 所得割の金額は「総所得額-基礎控除額43万円×保険料率」で求められ、保険料率は自治体ごとに異なります。
 ただし、医療分、後期高齢者支援分、介護保険料分はそれぞれ上限金額が定められ、国民健康保険料全体でも上限額が決まっています。※保険料率や上限額は自治体によって異なります。

弊所の近隣市町村の上限額

 国民健康保険税は料金としての性格から一定の制限を設けています。地方税法第703条の4第11項、19項及び27項において課税限度額について規定されています。
 具体的には、地方税方施行令第56条の88の2に限度額が規定されており、それぞれ市区町村の条例でこの限度額を超えない額を定めています。

東久留米市
年度令和5年度
医療分650,000円
後期支援分220,000円
介護分170,000円
合計1,040,000円
出典:東久留米市役所HP
小平市
年度令和5年度
医療分650,000円
後期支援分200,000円
介護分170,000円
合計1,020,000円
出典:小平市役所HP
清瀬市
年度令和5年度
医療分650,000円
後期支援分220,000円
介護分170,000円
合計1,040,000円
出典:清瀬市役所HP
西東京市
年度令和5年度
医療分650,000円
後期支援分220,000円
介護分170,000円
合計1,040,000円
出典:西東京市役所HP
東村山市
年度令和5年度
医療分650,000円
後期支援分220,000円
介護分170,000円
合計1,040,000円
出典:東村山市役所HP
昭島市
年度令和5年度
医療分650,000円
後期支援分220,000円
介護分170,000円
合計1,040,000円
出典:昭島市役所HP

後期高齢者医療保険料

 後期高齢者医療保険の保険料額は、被保険者が均等に負担する「均等割額」と被保険者の前年の所得に応じて負担する「所得割額」の合計額となります。なお、令和5年度の賦課限度額は660,000円です。

令和4・5年度の保険料額 出典:東京都後期高齢者医療広域連合

65歳以上の方の介護保険料(国民健康保険に加入している場合)

 40歳から64歳までの医療保険に加入している方(第2号被保険者)の介護保険料は、国民健康保険に加入している場合、国民健康保険の基礎賦課額(医療分)、後期高齢者支援金等賦課額(支援金分)、介護納付金賦課分(介護分)を合わせて国民健康保険料として、世帯主が納めます。
 65歳になると第1号被保険者という区分に変わり、納付方法が変わります。これまで健康保険料の一部として支払っていた介護保険料を別途支払うことになるのです。

介護保険料の上限

 第1号被保険者の場合、介護保険料の支払いは原則として年金からの天引きとなります。
 保険料額は、介護サービス基盤の整備の状況やサービス利用の見込みなどに応じて保険者(都道府県や市区町村など)ごとに設定する保険料基準額に、所得区分ごとに設けられた倍率を乗じて計算します。
 詳しい保険料を知りたい場合は、お住まいの自治体ごとの保険料基準額および所得段階・倍率を確認しましょう。

弊所の近隣市町村の保険料基準額および所得段階・倍率
東久留米市
小平市
清瀬市
西東京市
東村山市
昭島市

納付方法

 さらに、年金の受給額に応じて、「特別徴収」と「普通徴収」の2種類の納付方法に分かれます。それぞれについて見ていきます。

特別徴収

 年間18万円以上の年金を受給している場合は、年金から自動的に天引きされる「特別徴収」で納付します。年金から天引きされるため、特別な手続きを行う必要はありません。

普通徴収

 受給している年金が年間18万円以下の場合、あるいは年金の繰下げ受給を選択した場合は、「普通徴収」で納付します。普通徴収は、口座振替にするか、役所・銀行・コンビニなどに納付書を持参して支払う方法です。
 なお、専業主婦(夫)で64歳まで介護保険料を配偶者の健康保険料とともに納付してきた場合でも、65歳になると、特別徴収か普通徴収のどちらかで、介護保険料を納付することになります。
 ちなみに、第2号被保険者から第1号被保険者に変わり、介護保険料の納付方法が変わるのは、満65歳の誕生日の前日からです。たとえば、4月1日生まれの人であれば、前日の3月31日に第1号被保険者になるため、3月分の介護保険料から納付が始まります。

医療費負担の増加

給与所得者やその扶養家族・控除対象配偶者(協会けんぽや組合けんぽ等の対象者)

 給与所得者自身に譲渡所得が発生しても、原則として本人の窓口負担割合には影響しません。
 窓口負担割合は3割です。なお、70歳以上75歳未満の人の窓口負担は、2割または1割負担ですが、現役並み所得者は3割となります。

個人事業主や年金受給者等(国民健康保険の対象者)

 70歳未満の人の窓口負担は3割です。70歳以上75歳未満の人の窓口負担は、2割または1割負担ですが、譲渡所得が発生した場合は、医療費負担の割合が3割になる可能性があります。

75歳以上の人(後期高齢者医療の対象者)

 原則は1割負担ですが、譲渡所得が発生した場合は、医療費負担の割合が2割または3割になります。

参考 介護保険豆知識 

介護保険料算定所得の根拠

 介護保険料は、介護保険法施行令第39条により「合計所得金額」を用いて段階が区分されます。
 合計所得金額とは、同施行令第22条の2第1項において「地方税法第292条第1項第13号に規定する合計所得金額をいい、合計所得金額に給与所得又は公的年金等に係る所得が含まれている場合には給与所得及び公的年金等にかかる所得の合計額から10万円を控除して得た額」とされています。

合計所得金額とは

 合計所得金額とは、総所得金額(年金・給与・不動産・配当等の各収入金額から必要経費に相当する金額を控除した金額)に、申告分離課税の所得金額、山林所得金額及び退職所得金額を加算した金額をいいます。扶養控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引く前の金額です。
 ただし、「合計所得金額」は、

  • 純損失や雑損失の繰越控除
  • 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除
  • 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
  • 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
  • 特定投資株式に係る譲渡損失の繰越控除
  • 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除

等の適用を受けている場合には、その適用前の金額をいいます。
※介護保険法施行令の改正により、平成30年度から、土地や建物などに係る譲渡所得は特別控除後の金額が適用されます。

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