KEN SASAKI International Tax Accountant Office

STP+4Ps

お役立ち情報

 公益社団法人東村山法人会の令和3年8月20日発行の会報誌276号に寄稿したコラムへのリンクと抜粋を掲載しておきますので、是非ご一読ください。

 今回は、前回に引き続き、マーケティングについてお話ししていきます。今回はマーケティング編のⅡとしてマーケティングのエッセンスである「STP+4Ps」についてです。
 STPとは、Segmentation(市場の細分化)、 Targeting(標的セグメントの抽出)、 Positioning(提供する効用の明確化)の頭文字。4PsとはProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の4つのPです。

顧客主導型マーケティング戦略
 競争の激しい今日の市場で成功を収めるには、顧客中心でなければなりません。より優れた価値を提供することによって、競合他社から顧客を勝ち取り、繋ぎ止め、育てなくてはなりません。しかし、顧客を満足させる前に必要となるのが、ニーズの把握です。従って、堅実なマーケティングを行うには、慎重な顧客分析が求められます。
 特定の市場において、全ての顧客に対応していては収益は上がりません。少なくとも、全ての顧客に同じように対応することはできません。顧客はあまりにも多様であり、そのニーズも一様ではないからです。しかし、たいていの企業には、他社よりも優位に立てるセグメントが存在します。そこで必要となるのが、市場全体を分割し、自社にとって最も有望なセグメントを選定した上で、収益性を確保しつつそのセグメントに対応するための戦略を設計することです。これが、市場の細分化、ターゲティング、差別化、ポジショニングと呼ばれるプロセスです。

市場細分化
 市場には多様な顧客、製品、そしてニーズがあります。マーケターの仕事は、どのセグメントが自社に最高の機会を提供してくれるのかを判定することです。顧客を地理、デモグラフィックス、心理、行動といった要因に基づいてグループ分けすれば、それぞれに異なった対応を取ることができます。市場を異なるニーズや個性、行動を持ち、別個の製品やマーケティングプログラムを必要とする購買者グループに分割するプロセスを市場細分化(Segmentation)と呼びます。
 どのような市場も複数の市場に細分化できますが、どのように細分化しても等しく有用になるわけではありません。例えば、コカ・コーラの引用者を収入の高低で2分割したところで、どちらもマーケティング活動に同じ反応を示すのであれば、得るものはほとんどありません。1つの市場セグメントは、与えられた一連のマーケティング活動に対して、類似した反応を示す顧客集団でなければなりません。自動車市場の場合、価格に関係なく快適な大型車を選ぶ顧客は1つの市場セグメントを構成します。価格と維持費を気にする顧客もまた別のセグメントを構成します。双方のセグメントで強く支持されるような車は簡単には製造できないでしょう。

ターゲティング
 市場セグメントが明確になれば、そのうちの1つ、もしくは複数のセグメントへの参入が可能になります。ターゲティング(Targeting)とは、各市場セグメントの魅力を評価し、参入対象とする1つ、もしくは複数のセグメントを選定することです。標的として選ぶべき対象は、収益を上げつつ最大価値を生み出し、それを長期にわたって持続できるセグメントです。
 資源に限りがある企業なら、特殊セグメント、すなわちニッチ市場のみを選定するかもしれません。このようなニッチャーは、大手競合他社が見過ごしているか、あるいは無視しているような顧客セグメントの対応を専門としています。
 一方、大企業であれば、幅広い品揃えで市場セグメント全体をカバーしても良いでしょう。

ポジショニング
 参入するセグメントを決定したら、次に、標的とするセグメントへの製品をいかに差別化するか、そのセグメントの中でどのようなポジションを占めようとするのかを決めなくてはなりません。製品のポジションとは、競合他社製品との関係において、顧客のマインド内で当該製品が占める位置のことで、ここで望まれるのは、製品にユニークなポジションを持たせることです。市場の他製品と完全に同一視されるようでは、顧客それを購入する理由がなくなってします。
 ポジショニング(Positioning)とは、競合製品との相対関係において、標的とする顧客のマインド内で自社製品が明確、特殊かつ望ましい位置を占めるようにすることです。重要なのは、自社製品と競合ブランドとの違いが際立ち、標的市場の中で最大の優位性を獲得できるようなポジションを考えることです。
 自社製品のポジショニングにあたって、企業はまず、ポジションを構築するうえで有利となる顧客価値を明確にする必要があります。競合他社より低い価格を設定したり、高価格を正当化するだけのベネフィットを提示したりすれば、顧客価値は大きくなります。そして、実際にその価値を提供しなければなりません。このように、効果的なポジショニングは差別化から始まるのです。望ましいポジショニングを選定したのちは、そのポジションを標的顧客に適切に伝えるべく、企業のマーケティングプログラム全体でポジショニング戦略を支えるのです。

MM(マーケティング・ミックス)
 全体的なマーケティング戦略が決定したら、いよいよマーケティング・ミックスの詳細な計画に入ります。マーケティング・ミックス(Marketing Mix)は現代のマーケティングにおける主要概念の1つであり、ターゲット市場から望ましい反応を引き出すことを目的として組み立てる戦術的なマーケティングツールの集合体を指します。マーケティング・ミックスには製品の需要を喚起するためにできるすべてのことが含まれます。それらは大きく4種類の変数、すなわち4つのPに分類できます。
 Product(製品)は、企業がターゲット市場に提供する製品とサービスの組み合わせで、品種、品質、デザイン、特徴、ブランド名、パッケージ、サービスなどがあげられます。
 Price(価格)は、製品を獲得するまでに顧客が支払わなければならない代金の総称で、表示価格、割引、アロウワンス、支払期限、信用取引条件などです。
 Place(流通)は、標的顧客まで製品を届けるために企業が行う活動で、チャネル、流通範囲、立地、在庫、輸送、ロジスティクスなど。
 Promotion(販売促進)とは、自社製品のメリットを標的顧客に伝え、買いたいと思わせる活動で、広告、人的販売、販売促進、パブリック・リレーションズなどがあげられます。
 4つのPは販売者側の視点に立っていることから、顧客側から見た視点である4つのCで考えるべきとの主張もありますので、4Csを最後に紹介しておきます。
 Customer solution(顧客ソリューション)、Customer cost(顧客コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)の4つのCになります。
 なお、Customer solution(顧客ソリューション)は Product(製品)、Customer cost(顧客コスト)は Price(価格)、Convenience(利便性)はPlace(流通)、Communication(コミュニケーション)は Promotion(販売促進)に対応してます。マーケターは、まず4Csについて検討し、それを基盤として4Psを構築するのが望ましいでしょう。

参考文献

  • フィリップ・コトラー、ゲイリー・アームストロング、恩藏直人(2014)『コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理』丸善出版
  • 笠原英一(2019)『改訂版 強い会社が実行している「経営戦略」の教科書』KADOKAWA