マンション経営・アパート経営・駐車場経営をなさっているお客様から聞かれることの多い、不動産所得に係る税務についてまとめてみました。今回は、「賃貸用物件の取得に係る諸費用」について一覧表にしてみます。
賃貸用物件の取得に係る諸費用
◉ 租税公課
登録免許税(建物表示・保存登記):必要経費
不動産取得税(建物建築):必要経費
事業所税(新設):必要経費
固定資産税:必要経費
◉ 工事関係費
地質調査費(建物建築):取得価額(建物)
地質調査費(土地改良工事):取得価額(土地)
測量費(建物建築):必要経費 or 取得価額 (建物or土地)(所得税法基本通達38-10参照)
建築確認申請費用(建物建築):取得価額(建物)
立退料(建物取得に伴う場合):取得価額(建物)
立退料(建物取得後):必要経費(※ 取壊しに伴う場合はこちらの記事を参照)
取壊費用(土地の取得後1年以内):取得価額(土地)
取壊費用(業務関連):必要経費(※ 非業務用資産への建替目的や譲渡目的の場合はこちらの記事を参照)
埋立・土盛り・地ならし・切土・防壁(土地の造成・改良):取得価額(土地)
埋立・土盛り・地ならし・切土・防壁(構築物):取得価額(構築物)
埋立・土盛り・地ならし・切土・防壁(建物建築):取得価額(建物)
建築費:取得価額(建物)
設計料(建物建築):取得価額(建物)
仲介手数料(建物取得):取得価額(建物)
仲介手数料(土地取得):取得価額(土地)
水道施設利用権・公共下水道施設負担金(施設の設置):無形減価償却資産(償却期間15年)
◉ その他
借入金利子(業務開始前):取得価額(建物)
借入金利子(業務開始後・使用開始前):取得価額(建物)or 必要経費 選択可能
借入金利子(業務開始後・使用開始後):必要経費
登記費用:必要経費
雑費(地鎮祭・起工式):取得価額(建物)
雑費(竣工式):取得価額(建物)or 必要経費 選択可能
根拠条文等
所得税法施行令
第六条 法第二条第一項第十九号 (減価償却資産の意義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。
一 建物及びその附属設備(暖冷房設備、照明設備、通風設備、昇降機その他建物に附属する設備をいう。)
二 構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物をいう。)
三 機械及び装置
四 船舶
五 航空機
六 車両及び運搬具
七 工具、器具及び備品(観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供する生物を含む。)
八 次に掲げる無形固定資産
イ 鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)
ロ 漁業権(入漁権を含む。)
(中略)
ヨ 水道施設利用権(水道法 (昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第五項 (定義)に規定する水道事業者に対して水道施設を設けるために要する費用を負担し、その施設を利用して水の供給を受ける権利をいう。)
(以下省略)
第百二十六条 減価償却資産の第百二十条から第百二十二条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得価額は、別段の定めがあるものを除き、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に掲げる金額とする。
一 購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二 (定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額
二 自己の建設、製作又は製造(以下この条において「建設等」という。)に係る減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額
ロ 当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額
三 自己が成育させた第六条第九号イ(生物)に掲げる生物(以下この号において「牛馬等」という。) 次に掲げる金額の合計額
イ 成育させるために取得した牛馬等に係る第一号イ若しくは第五号イに掲げる金額又は種付費及び出産費の額並びに当該取得した牛馬等の成育のために要した飼料費、労務費及び経費の額
ロ 成育させた牛馬等を業務の用に供するために直接要した費用の額
四 自己が成熟させた第六条第九号ロ及びハに掲げる生物(以下この号において「果樹等」という。) 次に掲げる金額の合計額
イ 成熟させるために取得した果樹等に係る第一号イ若しくは次号イに掲げる金額又は種苗費の額並びに当該取得した果樹等の成熟のために要した肥料費、労務費及び経費の額
ロ 成熟させた果樹等を業務の用に供するために直接要した費用の額
五 前各号に規定する方法以外の方法により取得した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ その取得の時における当該資産の取得のために通常要する価額
ロ 当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額
2 法第六十条第一項 各号(贈与等により取得した資産の取得費等)に掲げる事由により取得した減価償却資産(法第四十条第一項第一号 (たな卸資産の贈与等の場合の総収入金額算入)の規定の適用があつたものを除く。)の前項に規定する取得価額は、当該減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなした場合における当該減価償却資産のこの条及び次条第二項の規定による取得価額に相当する金額とする。
所得税法基本通達
2-21 下水道法第2条第3号《公共下水道の定義》に規定する公共下水道を使用する排水設備の新設又は拡張をする者が、その新設又は拡張により必要となる公共下水道の改築に要する費用を負担して取得する当該公共下水道を使用する権利は、令第6条第8号タに掲げる水道施設利用権に準ずる減価償却資産とする。(昭49直所2-23、平11課所4-1、平12課所4-30改正)
37-5 業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除く。)、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税等は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。(昭51直所3-1、直法6-1、直資3-1、平5課所4-1、平17課個2-23、課資3-5、課法8-6、課審4-113改正)
(注)
1 上記の業務の用に供される資産には、相続、遺贈又は贈与により取得した資産を含むものとする。
2 その資産の取得価額に算入される登録免許税については、49-3参照
37-23 不動産所得の基因となっていた建物の賃借人を立ち退かすために支払う立退料は、当該建物の譲渡に際し支出するもの又は当該建物を取壊してその敷地となっていた土地等を譲渡するために支出するものを除き、その支出した日の属する年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する。
37-27 業務を営んでいる者が当該業務の用に供する資産(37-28において「業務の用に供される資産」という。)の取得のために借り入れた資金の利子は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。ただし、当該資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、当該資産の取得価額に算入することができる。(昭52直所3-33、直法6-10、直資3-15改正)
(注) 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を開始する前に、当該業務の用に供する資産を取得している場合の当該資産の取得のために借り入れた資金の利子のうち当該業務を開始する前の期間に対応するものは、この項の適用はなく、「38-8」の適用があることに留意する。
38-1 自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合又は建物等の存する土地(借地権を含む。以下この項において同じ。)をその建物等と共に取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手するなど、その取得が当初からその建物等を取壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取得に要した金額及び取壊しに要した費用の額の合計額(発生資材がある場合には、その発生資材の価額を控除した残額)は、当該土地の取得費に算入する。
38-8 固定資産の取得のために借り入れた資金の利子(賦払の契約により購入した固定資産に係る購入代価と賦払期間中の利息及び賦払金の回収費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合におけるその利息及び回収費用等に相当する金額を含む。)のうち、その資金の借入れの日から当該固定資産の使用開始の日(当該固定資産の取得後、当該固定資産を使用しないで譲渡した場合においては、当該譲渡の日。以下38-8の6において同じ。)までの期間に対応する部分の金額は、業務の用に供される資産に係るもので、37-27又は37-28により当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、当該固定資産の取得費又は取得価額に算入する。
固定資産の取得のために資金を借り入れる際に支出する公正証書作成費用、抵当権設定登記費用、借入れの担保として締結した保険契約に基づき支払う保険料その他の費用で当該資金の借入れのために通常必要と認められるものについても、同様とする。(昭52直資3-14、直所3-22、昭54直資3-8、直所3-20、昭56直資3-2、直所3-3、昭60直所3-1、直法6-1、直資3-1改正)(注)
1 その借り入れた資金が購入手数料等固定資産の取得費に算入される費用に充てられた場合には、その充てられた部分の借入金も「固定資産の取得のために借り入れた資金」に該当する。
2 「譲渡の日」は、36-12に準じて判定した日による。
38-10 埋立て、土盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額はその土地の取得費に算入するのであるが、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、土地の取得費に算入しないで、構築物の取得費とすることができる。
上水道又は下水道の工事に要した費用の額についても、同様とする。(昭56直資3-2、直所3-3、平元直所3-14、直法6-9、直資3-8改正)
(注)
1 専ら建物、構築物等の建設のために行う地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等土地の改良のためのものでない工事に要した費用の額は、当該建物、構築物等の取得費に算入する。
2 土地の測量費は、各種所得の金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、土地の取得費に算入する。
38-11 土地、建物等の取得に際し、当該土地、建物等を使用していた者に支払う立退料その他その者を立ち退かせるために要した金額は、当該土地、建物等の取得費又は取得価額に算入する。
49-3 減価償却資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含む。)をその資産の取得価額に算入するかどうかについては、次による。(平17課個2-23、課資3-5、課法8-6、課審4-113、平19課個2-11、課資3-1、課法9-5、課審4-26改正)
(1) 特許権、鉱業権のように登録により権利が発生する資産に係るものは、取得価額に算入する。
(2) 船舶、航空機、自動車のように業務の用に供するについて登録を要する資産に係るものは、取得価額に算入しないことができる。
(3) (1)及び(2)以外の資産に係るものは、取得価額に算入しない。
(注)
1 業務の用に供される資産に係る登録免許税等のうち、取得価額に算入しないものについては、37-5参照
2 業務の用に供されない固定資産に係る登録免許税等については、38-9及び60-2参照
3 上記の減価償却資産には、相続等により取得した減価償却資産を含むものとする。
49-4 減価償却資産の取得に際し、当該減価償却資産を使用していた者に支払う立退料その他立ち退かせるために要した金額は、当該減価償却資産の取得価額に算入する。
(注) 土地及び減価償却資産でない建物等の取得に際して支払う立退料については、38-11参照
法人税法基本通達
7-3-7 新工場の落成、操業開始等に伴って支出する記念費用等のように減価償却資産の取得後に生ずる付随費用の額は、当該減価償却資産の取得価額に算入しないことができるものとするが、工場、ビル、マンション等の建設に伴って支出する住民対策費、公害補償費等の費用(7-3-11の2の(2)及び(3)に該当するものを除く。)の額で当初からその支出が予定されているもの(毎年支出することとなる補償金を除く。)については、たとえその支出が建設後に行われるものであっても、当該減価償却資産の取得価額に算入する。(昭55年直法2-8「二十一」により改正)
◉ まとめ
不動産収入の計上時期
1 契約、慣習により支払日が定められているもの:定められた支払日
2 支払日が定められていないもの
① 請求があった日に支払うべきもの:請求の日
② その他のもの:支払いを受けた日
3 供託家賃
① 賃貸料の額に関する係争:供託された金額については、上記1又は2の区分により計上する。供託金を超える部分については、判決・和解等のあった日で計上する。
② 賃貸契約の存否の係争:判決・和解等のあった日で計上する。
4 礼金・権利金・名義書換料・更新料
① 貸付資産の引渡しを要するもの:引渡しのあった日又は契約の効力の発生日
② 引渡しを要しないもの:契約の効力の発生日
5 敷金・保証金
① 全額返金するもの:収入計上不要
② 貸付期間の経過に関係なく返還しない定めとなっている部分の金額:上記4の区分により計上する。
③ 貸付期間の経過に応じて返還しない金額が増加する定めとなっている場合のその増加する部分の金額:返還を要しないこととなった日
④ 解約などの時に、返還しなかった金額が上記5-②の金額を超えている場合のその超えている部分の金額:貸付が終了した日