KEN SASAKI International Tax Accountant Office

開業費の注意点

お役立ち情報

開業費とは、事業を開始するまでの間に特別に支出する広告宣伝費、接待費、旅費、調査費などのほか、開業準備のために特に借り入れた負債の利子、土地、建物などなどの賃借料、開業準備のために消費された電気、ガス、水道の料金の費用をいいます(所令7①一、137①一)。

 開業費は、原則として5年の均等償却を行うことになりますが、任意償却も認められています。開業費の任意償却は節税のポイントにもなりますので、ぜひ活用なさってください。

 原則の場合の均等償却の計算方法については、次の通りです。

 開業費の額 × 12(又は業務を行っていた期間の月数) / 60 = その期間の償却費の額

 また、開業前にかかった経費が全て開業費に該当するわけではないので、下記の誤りやすいポイントを参照なさってください。

(2019/3/5 一部訂正)

[誤りやすいポイント]

◉資産の取得に要した金額とされるべき費用や前払費用は、所得税法施行令第7条第1項に規定のある通り繰延資産から除かれています。使用可能期間が1年未満又は取得価額が10万円未満のいわゆる少額な減価償却資産については、繰延資産から除かれるため、開業費にはなりません。少額な減価償却資産については、使用した時にその取得価額がそのまま必要経費になります。

◉開業費については、初年度において、5年間で償却する方法を選択した場合でも、2年目以降でその未償却残高を任意に償却することができます。更正の請求で遡って訂正することはできませんが、均等償却から任意償却への変更を禁止する条文は ないことから、所得税法施行令第137条第3項に規定のある通り、確定申告書に当該繰延資産の額の範囲内の金額を記載した場合には、当該金額として記載された金額が必要経費に算入すべき金額となります。

◉開業費を任意償却する場合、償却期間についての制限は設けられておりません。従って、均等償却の場合の5年間を経過した後でも、開業費の額の範囲内であれば、必要経費に算入することが可能です。

◉「開業費」及び「開発費」以外の繰延資産で支出する金額が20万円未満のものはその支出をした年の必要経費に全額算入します(所令139の2)。

参考 所得税法施行令

(繰延資産の範囲)

第七条  法第二条第一項第二十号 (繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、個人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
一  開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
二  開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)
三  前二号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの
イ 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
ハ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
ニ 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
ホ イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

2  前項に規定する前払費用とは、個人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出する費用のうち、その支出する日の属する年の十二月三十一日(年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時)においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。

(繰延資産の償却費の計算)

第百三十七条  法第五十条第一項 (繰延資産の償却費の計算及びその償却の方法)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる繰延資産の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一  第七条第一項第一号又は第二号(繰延資産の範囲)に掲げる繰延資産 その繰延資産の額を六十で除し、これにその年において不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行つていた期間の月数(その年がその繰延資産となる費用を支出した日の属する年である場合には、同日から当該業務を行つていた期間の末日までの期間の月数)を乗じて計算した金額(当該計算した金額が、その繰延資産の額のうち既にこの項の規定により不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入された金額以外の金額を超える場合には、当該金額。次号において同じ。)
二  第七条第一項第三号に掲げる繰延資産 その繰延資産の額をその繰延資産となる費用の支出の効果の及ぶ期間の月数で除し、これに前号に規定する業務を行つていた期間の月数を乗じて計算した金額

2  前項の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。

3  居住者が、第一項第一号に掲げる繰延資産につきその年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額として、当該繰延資産の額の範囲内の金額をその年分の確定申告書に記載した場合には、同号に掲げる金額は、同号の規定にかかわらず、当該金額として記載された金額とする。

(繰延資産となる費用のうち少額のものの必要経費算入)

第百三十九条の二 居住者が支出する第七条第一項第三号(繰延資産の範囲)に掲げる費用のうちその支出する金額が二十万円未満であるものについては、前款(繰延資産の償却)の規定にかかわらず、その支出する金額に相当する金額を、その者のその支出する日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。