KEN SASAKI International Tax Accountant Office

譲渡所得の計算における建物の取得費の計算

お役立ち情報

 譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
 取得費は、土地の場合、買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額です。
 しかし、建物の場合には、その建物の建築代金や購入代金などの合計額がそのまま取得費になるわけではありません。
 建物は使用したり、期間が経過することによって価値が減少していきます。
 したがって、建物の取得費は建物の購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引く必要があります。

計算方法・計算式
 減価償却費相当額は、その建物が事業に使われていた場合とそれ以外の場合では異なっており、それぞれ次に掲げる額となります。

事業に使われていた場合
 建物を取得してから売るまでの毎年の減価償却費の合計額になります。
(注1)仮に毎年の減価償却費の額を必要経費としていない部分があったとしても、毎年の減価償却費の合計額とすることに変わりはありません。
(注2)「国外中古建物の不動産所得の損益通算等の特例」の適用を受けた国外中古建物を売った場合には、この建物の毎年の減価償却費の合計額からこの特例により生じなかったものとみなされた損失に相当する部分の金額の合計額を控除した金額となります。

事業に使われていなかった場合
 建物の耐用年数の1.5倍の年数(1年未満の端数は切り捨てます。)に対応する旧定額法の償却率で求めた1年当たりの減価償却費相当額にその建物を取得してから売るまでの経過年数を乗じて計算します。
 具体的には、次の算式により計算します。

建物の取得価額×0.9×償却率(※1)× 経過年数(※2)= 減価償却費相当額(※3)

※1 非業務用建物の償却率

  • (注1)「金属造①」・・・軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3ミリメートル以下の建物
  • (注2)「金属造②」・・・軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3ミリメートル超4ミリメートル以下の建物

※2 経過年数の6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます。
※3 建物の取得価額の95パーセントを限度とします。

根拠法令等
所法33、38、
所令85、
措法41の4の3

所得税法(譲渡所得)
第三十三条 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
2 次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二 前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得
3 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの
4 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
5 第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。

(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)
第三十八条 譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。
2 譲渡所得の基因となる資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合には、前項に規定する資産の取得費は、同項に規定する合計額に相当する金額から、その取得の日から譲渡の日までの期間のうち次の各号に掲げる期間の区分に応じ当該各号に掲げる金額の合計額を控除した金額とする。
一 その資産が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供されていた期間 第四十九条第一項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)の規定により当該期間内の日の属する各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるその資産の償却費の額の累積額
二 前号に掲げる期間以外の期間 第四十九条第一項の規定に準じて政令で定めるところにより計算したその資産の当該期間に係る減価の額

所得税法施行令(非事業用資産の減価の額の計算)
第八十五条 法第三十八条第二項(譲渡所得の基因となる資産の減価の額)に規定する資産の同項第二号に掲げる期間に係る減価の額は、当該資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額につき、当該資産と同種の減価償却資産に係る第百二十九条(減価償却資産の耐用年数等)に規定する耐用年数に一・五を乗じて計算した年数により第百二十条第一項第一号イ(1)(減価償却資産の償却の方法)に規定する旧定額法に準じて計算した金額に、当該資産の当該期間に係る年数を乗じて計算した金額とする。この場合において、当該資産と同種の減価償却資産が第百三十四条第一項第一号イ又はハ(減価償却資産の償却累積額による償却費の特例)に掲げる減価償却資産に該当する場合には、当該計算した金額は、当該同種の減価償却資産の同号イ又はハに掲げる区分に応じ当該イ又はハに定める金額を限度とする。
2 前項の場合において、次の各号に掲げる年数に一年未満の端数があるときの処理については、当該各号に定めるところによる。
一 前項に規定する一・五を乗じて計算した年数 一年未満の端数は、切り捨てる。
二 前項に規定する期間に係る年数 六月以上の端数は一年とし、六月に満たない端数は切り捨てる。

租税特別措置法(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例)
第四十一条の四の三 個人が、令和三年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、当該国外不動産所得の損失の金額に相当する金額は、所得税法第二十六条第二項及び第六十九条第一項の規定その他の所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかつたものとみなす。
2 この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 国外中古建物 個人において使用され、又は法人(所得税法第二条第一項第八号に規定する人格のない社団等を含む。)において事業の用に供された国外にある建物であつて、個人が取得をしてこれを当該個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもの(当該不動産所得の金額の計算上当該建物の償却費として同法第三十七条の規定により必要経費に算入する金額を計算する際に同法の規定により定められている耐用年数を財務省令で定めるところにより算定しているものに限る。)をいう。
二 国外不動産所得の損失の金額 個人の不動産所得の金額の計算上国外中古建物の貸付け(他人(当該個人が非居住者である場合の所得税法第百六十一条第一項第一号に規定する事業場等を含む。以下この号において同じ。)に国外中古建物を使用させることを含む。)による損失の金額(当該国外中古建物以外の国外にある不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下この号において「国外不動産等」という。)の貸付け(他人に国外不動産等を使用させることを含む。)による不動産所得の金額がある場合には、当該損失の金額を当該国外不動産等の貸付けによる不動産所得の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額)のうち当該国外中古建物の償却費の額に相当する部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額をいう。
3 第一項の規定の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合において、当該譲渡による譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費を計算するときにおける所得税法第三十八条の規定の適用については、同条第二項第一号中「累積額」とあるのは、「累積額からその資産につき租税特別措置法第四十一条の四の三第一項(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例)の規定により生じなかつたものとみなされた損失の金額に相当する金額の合計額を控除した金額」とする。
4 前二項に定めるもののほか、第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。