支払いを受ける報酬から源泉所得税を天引きされて入金されている場合の経理方法についてご質問を受けましたので、ポイントをまとめておきます。
個人でお仕事をなさっている方が、原稿の報酬や講演の報酬、挿絵の報酬等を受け取る場合や、弁護士や司法書士、社会保険労務士等の方がその業務に関して報酬を受け取る場合などには、所得税及び復興特別所得税が天引きされて差額が支払われます。
天引きされた所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額については、確定申告の際に精算することになります。
所得税の確定申告書には、天引きされた所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額を記載する欄がありますので、その年の源泉徴収税額とその年の所得税と復興特別所得税の合計額とを相殺して、差額分を納付したり、納めすぎた源泉徴収税額が還付されたりすることになります。
また、報酬から所得税等が天引きされた残額が入金された場合の仕分けがわかりにくいとのご質問でしたので、その点について仕訳例とともに説明をしたいと思います。
(説例1)現金売上の場合
翻訳料としてA株式会社に108,000円を請求し、同日中に源泉徴収税額11,026円を差し引いた残額96,974円を現金で受け取った場合
(借方)現金 96,974円 / 売上 108,000円 (貸方) :取引先 A株式会社、翻訳料
(借方)仮払源泉所得税等 11,026円 /
(説例2)売上が後日振込まれる場合
翻訳料としてA株式会社に108,000円を請求し、翌月10日に源泉徴収税額11,026円を差し引いた残額96,974円が普通預金に振り込まれた場合
請求時
(借方)売掛金 108,000円 / 売上 108,000円 (貸方) :取引先 A株式会社、翻訳料
入金時
(借方)普通預金 96,974円 / 売掛金 108,000円 (貸方) :取引先 A株式会社、売掛金回収
(借方)仮払源泉所得税等 11,026円 /
現金売上の場合でも、売掛金になる場合でも、売上は源泉徴収税額込みの総額で計上することになります。
また、勘定科目は「仮払源泉所得税等」でなくとも、仮払税金や源泉徴収税額等適宜の勘定科目でも結構ですので、ご自身がわかるように仕訳をなさってください。
決算整理の段階での振替仕分
(借方)事業主貸 11,026円 / 仮払源泉所得税等 11,026円 (貸方)
なお、年末の決算整理の段階で「仮払源泉所得税等」は「事業主貸」勘定に振り替ることになるので、最初から「事業主貸」勘定を使用する方法もあります。
(説例1)現金売上の場合
(借方)現金 96,974円 / 売上 108,000円 (貸方) :取引先 A株式会社、翻訳料
(借方)事業主貸 11,026円 /
(説例2)売上が後日振込まれる場合
請求時(借方)売掛金 108,000円 / 売上 108,000円 (貸方) :取引先 A株式会社、翻訳料
入金時
(借方)普通預金 96,974円 / 売掛金 108,000円 (貸方) :取引先 A株式会社、売掛金回収
(借方)事業主貸 11,026円 /
参考
消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税
弁護士や税理士などに報酬を支払った場合には、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収することになっています。 この場合、源泉徴収の対象となる金額は、原則として、報酬・料金として支払った金額の全部、すなわち、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)込みの金額が対象となります。
ただし、弁護士や税理士などからの請求書等に報酬・料金等の金額と消費税等の額とが明確に区分されている場合には、消費税等の額を除いた報酬・料金等の金額のみを源泉徴収の対象としても差し支えありません。
例えば、令和5年中の税理士からの請求書に、税理士報酬108,000円とだけ記載されていた場合には、源泉徴収税額は108,000円の10.21%相当額である11,026円(1円未満切捨て)となります。
これに対して、税理士からの請求書に、税理士報酬100,000円、消費税等8,000円と記載されており、報酬金額と消費税等の額とが区分されている場合には、源泉徴収税額は税理士報酬100,000円の10.21%相当額である10,210円となります。